こんにちは!シンガポールの大学で日本語を教えながら、論語塾を主宰しているケーシー加藤万奈です。この「わたしの論語」というコラムでは、おすすめの論語を少しずつご紹介していきます。
論語には「難しそう」というイメージがあるかもしれませんが、根っこはとってもシンプル。ウェルビーイングな言葉の宝庫です。どうぞ、お気軽にお付き合いください。
【わたしの論語4】毎晩寝る前に、今日がんばったわたしを認めよう!
今回ご紹介するのは、がんばった自分を認めてあげることの大切さを教えてくれる言葉です。
学而 1-4
曾子曰く、吾れ日に三たび吾が身を省りみる。
人の為に謀りて忠ならざるか。
朋友と交わりて信ならざるか。
習わざるを伝うるか。
現代語訳は、以下です。
曾子は言った。
私は毎日、3つのことを反省します。
相談に乗りながら、真心をこめて応えようとしなかったのではないか。
友人との信頼関係を大切にできているか。
よく理解していないことを、人に語らなかったか。
今回の論語は、これまでご紹介してきた孔子の言葉ではなく、弟子の曾子の言った言葉です。孔子の道を、のちに伝える第一人者となった曾子。孔子先生から学んだことを、しっかり理解してから後世に伝えようとしていた、彼の真面目な一面が窺える章句です。
ところで、新しい一万円札には、もう見慣れましたか?
新一万円札の顔となった渋沢栄一は、この教えを座右の銘にしていたそうです。彼は「論語と算盤」という本を残すほど、論語を大切にしていました。(厳密には、渋沢栄一自身が書いたのではなく、彼が講演で話したことをまとめたものです)
友達から悩みを相談されて、そのタイミングや内容から、「100パーセントの真心で応えられなかったかもしれない」と後悔することも、わざとではなかったにしても、友人を大切にしきれなかったなと思う経験も、中途半端な知識を披露してしまったなと反省することも、日々の生活の中で、ゼロにすることは難しいですよね。改められるところは改めて、より良く生きていきたいと思います。
ただ、まいにちまいにち自分を戒めて反省するのは、ちょっと気が滅入ってしまいそう。なので、わたしは、がんばった自分を振り返り、認めてあげるのでも良いんじゃないかなと思っています。三省ではなくて、三認です。
ウェルビーイングのためにも、振り返りの時間を持つこと自体は、とても大切なことだと考えています。1948年の世界保健機構によるWHO憲章では、ウェルビーイングを「肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義しています。そして、自分らしくいきいきと生きる幸せを、他の誰でもなく、わたしたち自身が実感できていることが、何よりも重要です。
みなさんも今晩から、がんばった自分を3つ認めて、ときには褒めてみませんか?今日の良い状態を明日も保てるように。明日は、より良い一日になるように。そんな風に思いながら一日を終えられたら、素敵ですね。
それにしても、2,500年前から考えられていたウェルビーイングは、まさに人類普遍のテーマですね。ちなみに、本屋さんの「三省堂」は、この言葉から採られたものなんですよ。