美容・健康を軸にしたブランド「WHITETREE HEALTH AND BEAUTY」代表取締役/ブランドプロデューサーを務める、フローレンスめぐみさん。
自然環境保全を考慮した自社ブランド「WHITETREE」ウェルネスティーは、5つ星ホテルや病院、デパートなどで取り扱われ、総合的にハーブを活用したウェルネスプログラム開発なども提案。現在、世界6カ国にて展開されています。
シンガポールを起点に独自のサプライチェーンを構築し、商品開発、海外展開を考慮した総合ビジュアルブランディング、デザイン全般(パッケージやロゴマーク、販促物など)、マーケティング、現地での営業代行からイベント企画運営、海外市場展開における総合サポートを一貫して行う、フローレンスめぐみさんに、起業のきっかけから、現在の事業への思い、日々のやりがいや今後の展開まで、詳しくお話をうかがいました。
シンガポールを拠点に、総合的なウェルネス事業を展開
――まずは、現在のお仕事内容をうかがえますか?
自然原料を使用した商品開発を軸に、事業を展開しています。主にオーガニックハーブティーブランド「ホワイトツリー(WHITETREE)」は、アジアの高級ホテルリゾートなどに導入されています。また自社のフラッグショップとなる飲食店、ヘアサロン、セレクトショップの運営。“繋がり”をテーマに、日本商品などの海外進出の支援や市場調査なども行っています。また、自社のリソースを活かし、ウェルネスやハーブ関連商品の商品開発、ホテルスパなどのウェルネスプログラム開発なども行っています。
2021年に自社商品を体験できるカフェ、ヘアサロン、セレクトショップ3つの業態をまとめた体験型コンセプチュアルストアをシンガポールに開店し、今後、アジア各国に展開を控えています。
イタリア留学が、自己効力感を養うきっかけに
――シンガポールで起業される前は、どのようなキャリアを築いてきたのでしょうか?
イタリア・ミラノにデザインを学ぶために留学し「The design school Istituto Marangoni in Milan」を卒業後、青山のデザインオフィスで大手企業のVI(ビジュアル・アイデンティティ)、ブランディングやパッケージデザインなどを行うクリエイティブデザイナーとして働いていました。デザイナー時代は、”いかに大手企業の商品に関わって、デザイナーとして知名度を上げていくか”と、デザインの仕事が楽しく大好きではありましたが、自分のデザイナーとしてのキャリアばかりを気にしながら、仕事をしていたと記憶しています。
――イタリアへの留学を決断し、実行されたことは大きなことだったと思いますが、めぐみさんの人生の中で、ターニングポイントのひとつであったのでしょうか?
はい。自分の努力で夢を叶えたことは、その後の自己効力感を養うきっかけになったと思います。当時、自分で何年もかけてお金を貯めて行ったので、本当に貧乏学生でした。そしてイタリア語はとても難しく、何もかもが初めての体験ばかりで必死の日々…。でも大変だったとしても、周りに無理だと言われても、最後まで自分で留学生活をやり遂げたことは、大きな自信になりました。
体調不良がきっかけで、デザイナーから起業の道へ
――デザイナーとして順調にキャリアを重ねられていたと思いますが、現在の事業につながる自然の原料やウェルネスに興味を持ったことは、ご自身の体調不良をきっかけだったのですよね?
はい。体調を崩してしまってから、「植物の力を自分の体やライフスタイルの中に取り入れよう」と、意識するようになりました。結局、体調が戻らず仕事を辞めたのですが、その後、自然原料を使って手作り商品を作って友人にプレゼントした際に友人がとても喜んでいる姿を見て、「今まで自分はデザイナーとして、その商品を手にするお客様のことを考えずに仕事していたのだな」と気がつきました。
そして、ブランドに関わる全ての人が少しでも幸せな気持ちになれるようなブランドオーナーになりたいと思い、趣味で始めた手作りのアロマやハーブ商品を広めたいと一念発起し、起業しました。あのとき体調を崩したことは、自分が社会的に周囲からどう見られるかということが大事なのではなく、自分はどんなことに喜びを感じられるか、見極めることのできる、良いきっかけになったと思います。
2021年、ウェルネスを軸にした体験型ストアをオープン!
――仕事を進めるうえで経験してよかったこと、逆に、経験しておきたかったことはありますか?
自社店舗の開店です。自分で貯めてきたお金をすべて使って、2021年にお店を作りました。それもまだ誰も行っていないような、飲食店とセレクトショップとヘアサロン、全てが1つ屋根の下で繋がっているショップです。家族や子供たちも自由に行き来できます。
飲食店やヘアサロンなど全てが未経験の中でのお店作りで本当に大変でしたが、自分たちの場所を作れたことは大きな意味や価値を生み出せたと思います。そして私たちのお店が雇用を生んだり、シンガポール在住の日本人の方々にとってのコミュニティーや出会いの場として存在できていることは、とても大きな喜びです。今後も多くの人に喜んでいただけることを企画し、そこでたくさんの方々とお会いしていきたいです。
海外で事業を継続し、展開することの厳しさと楽しさとは?
――今までのキャリアの中で、辛いこと、ストレスに感じるエピソードを教えてください。
海外で事業をしているとスタッフの入れ替わりがあったり、働きたくてもビザの関係で働けない方も多く、チーム作りは本当に大変だと感じています。だからこそ、今いるチームを大切にしたいという気持ちがあります。それに今まで、女性経営者ということで態度が急変する人、セクハラやパワハラ、モラハラなどを受けることも、実際にたくさんありました。そんな時は怒りをエネルギーへと変換して、自分を前に進める原動力にしています。
コロナ禍では、何度も小売事業を続けるべきかどうかを考えました。でも、多くの方々に「どれだけホワイトツリーのハーブティーが癒しになっているか」、「幸福感を感じられるか」、「プレゼントをして喜んでいただいている」など、満面の笑顔で話していただき、たいへんな状況下でも続けていこうと思える、原動力になりました。いつも応援してくれる人がいる、喜んでくれる人がいる限り、絶対に続けていこうと決心したことを覚えています。
社会の循環を生むことができる商品作りを!
――めぐみさんの会社では、障害を抱えている方々とも一緒に製品作りを行っているのですよね?
はい。シンガポールで初めて雇用したシンガポール人のスタッフは、身体障害を持った男性でした。でも、本当にびっくりするくらい不自由なく動き回るので、足が不自由なことを忘れてしまうほどでした。また、商品作りの中では福祉施設で知的障害を抱えている方々に、弊社の商品パッケージの包装などをお願いしています。以前にも、施設に訪問した際に、とても楽しそうに私たちの商品の包装をしてくれているのをみて、自然と涙があふれてきました。社会循環を生むことのできる商品作りをさせていただいていることは、本当に感謝の気持ちで一杯です。これからも続けていきたいと感じた瞬間でした。
――障害を持つ方を雇用するという考えのきっかけには、学生時代のボランティアでの忘れられない経験があるとか?
学生時代に、ボランティア活動で身体障害を持った方々の施設に行ったことが、その考えのもととなっています。最終日、みんなで手を繋いで輪になって、手をあげるダンスのようなものをしたのですが、私の左にいた方が周りの方と笑顔で接し、楽しそうにしているのに私には笑顔を向けることなく、また輪になって手を挙げているのに、私にだけ手を上げてくれなかった、ということがありました。そのダンスの最中は「最終日の最後のアクティビティーなのに…。ひどい! 私が何か悪いことしたのかな?」と、怒りに似た悲しい気持ちになっていました。でもダンスが終わると、その方は私の方に体全部を向けて、「元気よく、ありがとう!とても楽しかったです!」と笑顔で話しかけてくださいました。
実は、よく見ると、その方は右半身麻痺の方で、顔も手も右側だけが動かない状態でした。きっとダンスの最中も、一生懸命、私のために手を上げようとしてくれていたはずです。それなのに、なんて自己中心的な考え方をしていたのだろう…と、他の人の状況や想いをうかがい知ることをせず、自分の勝手な判断でネガティブな方向に判断していたことを反省しました。それからは、できる限り物事を多角的に捉え、ポジティブに考えるように心がけています。
ハーブの力や心身を大切にする考え方を、世界中に広めたい
――日々の仕事を行うとき、心がけていることはありますか?
ポジティブ思考、公平性であること、朝の挨拶を元気に全員に声をかけること、人の喜びや悲しみに共感をして一緒に乗り越えること自分の軸を見失わないことと同時に、他のみんなにとっても幸せな場所であるかどうかを大切にしたいです。
アクティブシェア、アクティブリスニング、スピード感、高い行動力、そして本質的なものへの繋がりがあるかなどを、つねに考えています。
――ご自身が大切にされている座右の銘、言葉、生きる上でのモットーなどがありましたら、お聞かせください。
“一期一会”
“感謝の気持ち”
――お手本にしているロールモデルがいらっしゃいましたらお聞かせください。
特定の方というより、人のことを応援できる人を、すごいなといつも感じています。
――今後の目標や、叶えたいことはありますか?
自分がしてきた事業の昇華、成長、チーム創りです。今後は自社のハーブガーデンを作り、世界中でブランドに関わるチームを創っていきたいですね。インドネシア進出&大手ブランドとのコラボレーションもスタートしますが、世界中で自分が作った商品やサービスが使われることが大きな夢です。
また、その展望と同時に、店舗でのコミュニティー作りも強化していきたいです。最も苦手意識のある自分自身の発信も、力を入れていきたいですね(笑)。今後は、自分たちがしてきたことをたくさんの方に知ってもらうこと、応援したいと思えるように、一緒に共感とともにブランドに関わってもらえるような発信を続けて、一生をご一緒するブランド作りをしていきたいです。
――最後に、読者の方へのメッセージがございましたら、ご記入ください。
”You smile , I melt.”
自分の心に素直に、幸せを感じられることを大切に進めていきましょう。いつかブランドをきっかけに、多くのみなさんと繋がりを持てたら、とても嬉しいです。
――めぐみさん、貴重な体験や思いをシェアしていただき、ありがとうございました!
美容健康ブランド「WHITETREE HEALTH AND BEAUTY」代表取締役/ブランドプロデューサー。イタリアの、ミラノデザイン学校を卒業後、15 年以上にわたり資生堂、サッポロ飲料、グリコ食品など大手メーカーのビジュアルデザインを手掛けた実績を持つ。2018 年内閣府「日本とアジアを繋ぐ日本人女性起業家シンポジウム」では、アジアで活躍する女性起業家として唯一、シンガポール日本人代表として選出される。
著書「ココロとカラダを癒す ハーブを楽しむ暮らしのレシピ」(朝日新聞出版)
美容健康ブランド「WHITETREE HEALTH AND BEAUTY」代表取締役/ブランドプロデューサー。
イタリアの、ミラノデザイン学校を卒業後、15 年以上にわたり資生堂、サッポロ飲料、グリコ食品など大手メーカーのビジュアルデザインを手掛けた実績を持つ。2018 年内閣府「日本とアジアを繋ぐ日本人女性起業家シンポジウム」では、アジアで活躍する女性起業家として唯一、シンガポール日本人代表として選出される。
著書「ココロとカラダを癒す ハーブを楽しむ暮らしのレシピ」(朝日新聞出版)