「大阪・関西万博」イタリア館の余韻が、冬季オリンピック開催で話題のミラノ・コルティナへ! “再生する美”がつなぐ芸術と食のバトン

2025年秋、「大阪・関西万博」は、華やかに幕を閉じました。そして、その熱気を受け取るかのように、2026年「ミラノ・コルティナ冬季オリンピック」から新たなニュースが届きました! ヨーロッパの旅やアート事情に詳しい「Voyage Leaders」のMIKI(上原未來)さんによるレポートです。

「ミラノ・コルティナ冬季オリンピック」の組織委員会により、2025年11月6日、世界遺産「アレーナ・ディ・ヴェローナ」で閉会式が開催されましたが(2026年2月22日にも開催)、テーマを“Beauty in Action(躍動する美)”と発表。オリンピックの開会式や閉会式が世界遺産で行われるのは初めてだそうで、ロベルト・ボッレの出演が発表されました。スポーツ×芸術×自然を“動きの中の美”として讃える、イタリアらしい総合芸術のステージになったようです。

さらに遡れば、このオリンピックの“象徴”が最初に動き出した場所のひとつは、「大阪・関西万博」のイタリア館でした。

2025年4月14日、トーチ(オリンピック/パラリンピック)がミラノのトリエンナーレと大阪・イタリア館で同時に公開。リサイクルアルミなどサステナブル素材を用いたデザインは“イタリアの風景を映す”造形として高く評価され、会期中はイタリア館で展示され、閉幕期の演出でも存在感を放っていました。

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“芸術が命を再生する” — イタリア館の体験が、次章へと継がれる

テーマは「L’Arte Rigenera la Vita(芸術が命を再生する)」。宇宙空間のような没入型の展示、屋上のボタニカルガーデン、自然とテクノロジーが呼応する構成は、時に美術館以上の“体感”をもたらしました。

MIKIさんが大阪を拠点にするイタリアンシェフ・西出雅章さんとともに辿った記憶は、今なお鮮明だそう。

MIKI:展示からどんなインスピレーションを受けましたか?

西出:重厚で洗練された世界観に圧倒されました。日本の“静”に対して、イタリアの“動”の美。料理は私にとってアート表現でもあるので、そのダイナミズムを今後の一皿に落とし込みたいですね。

“ミラノのトーチ” — 大阪から灯った象徴

大阪・イタリア館でのトーチ公開(2025年4月14日)は、ミラノ・コルティナへ向かう物語の起点という位置づけです。カロ・ラッティ・アソーチアティのデザインは、軽やかで再生素材を活かした“現代の炎の器”。大阪で見上げたトーチが、来年2月の北イタリアで走り、そしてヴェローナの大舞台へ収束する——この“動線”こそ、万博の理念と五輪の精神がつながる証となるでしょう。

会期中に体験した“18州の食の旅” — 「EATALY」の提案はレガシーに

屋上レストラン「EATALY」では、イタリア全18州の郷土料理とワインを週替わりで提供。各州観光局の監修で“土地の記憶”を丁寧に皿へと翻訳した“食のストーリーテリング”は、味覚で巡る旅そのものでした。

西出:「多様性こそイタリアの魅力」。大阪のローカル食材とイタリアの技法を掛け合わせてきた自身の取り組みとも響き合い、“なにわイタリアン”の進化形を確かに示してくれました。

味・品質・持続可能性 — “美”を支えるサプライチェーン

「EATALY」が重んじるのは深い味覚×卓越した品質×サステナビリティ。生産者と土地への敬意が、レシピの忠実性やワインのペアリングにまで貫かれていました。

西出:大阪でも規格外野菜の活用など、SDGsの実践を続けています。ガラス器(菅原工芸硝子)を使った「青の洞窟」など、クラフトと料理、素材と空間が溶け合う表現は、イタリア館のムラーノガラスと通底する“手仕事の美”を感じさせました。

MIKI:この青いガラス皿の海をイメージした料理作品は、イタリア館に展示している隈研吾氏×ムラーノガラスのdieXeシャンデリアの展示の美しい青色からインスパイアされ、アップデートしたお料理だそうです。

万博から“次のステージ”へ——大阪×イタリアンの深化

大阪ヘルスケアパビリオンでは、西出シェフが「ゼッポリーニ・アッラ・オオサカーノ」を提供。ナポリの“ゼッポリーネ”と大阪のたこ焼き文化を掛け合わせ、海外来場者の記憶にも残る“遊び心の一皿”に。

西出:単に“大阪食材でイタリア料理”ではなく、“大阪という土地の記憶を、イタリア料理の形式で再構築する”という発想へ。器・空間・技法・素材が“アート”として一体化する料理を、これからも探究します。

そして、ヴェローナへ——“Beauty in Action”が示すもの

2026年2月22日、世界遺産「アレーナ・ディ・ヴェローナ」での閉会式は、世界遺産の舞台で初めて行われるオリンピック式典となります。


ロベルト・ボッレが率いる身体表現は、オペラとダンス、デザインとテクノロジーが交差するイタリアの総合芸術を体現するはず。大阪で体感した“再生する美”は、ミラノ・コルティナで“動きの中の美”として再び呼吸をはじめることでしょう。

MIKI(上原未來)|ビデオジャーナリスト/ビジュアルディレクター

2006年、フランスの映像高等教育機関「ESRA Paris」在学中に、ビデオジャーナリストとしてキャリアをスタート。アシェット婦人画報社(現・ハースト婦人画報社)に入社し、「ELLE」などのライフスタイルメディアで動画プロデューサーとして活躍。その後フリーに転身し、国内外で多数の映像・記事制作を手がける。

現在は、企業や個人の映像ブランディングを手がけるビジュアルディレクター/コンテンツクリエイターとしても活動中。

フランスのテレビ番組にレギュラー出演するほか、「Tele5Monde」ではビデオジャーナリストとして、日本からの特派員レポートを担当。イタリアとも縁が深く、ICE(イタリア貿易促進機構)のお墨付きを得たエンタメプロダクションと提携し、映像を通じた文化交流の促進にも力を注いでいる。

西出 雅章(にしで まさあき)|料理人/イタリア料理シェフ

東大阪市出身。18歳で料理の世界に入り、「ザ・リッツ・カールトン大阪」などで研鑽を積んだ実力派。国内外でレストランの統括を務める中、「Bulgari」や「Tiffany & Co.」など一流ブランドのコレクション発表会で料理を担当。

40歳を前に独立しイタリア料理店「Nishideria (ニシデリア)」を開業。“コナモン(粉もの)”料理を得意とし、パスタやパン、ピッツァなどはすべて粉から自店で手づくりしている。

大阪・関西万博では、大阪パビリオンでの地産食材振興メニューの発表者として、大阪商工会議所主催の公募により大阪全体の4店の内の1店に選ばれた。


取材協力:Fondazione Milano Cortina 2026 

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Written By

九州生まれ、サンフランシスコ育ち。
18歳でパリへ移住し、フランスのカルチャーWebメディアでビデオジャーナリストとしてキャリアをスタート。

2010年1月からはハースト婦人画報社にてビデオプロデューサーを務め「ELLE ONLINE」「ELLEgirl」「メンズクラブ」など、多数の媒体で映像制作に携わり、エディターとしての経験も積む。

2013年1月より独立。
ファッション業界やWebメディアで培った知識を活かし、グローバルに活動を展開。

豊かな表情をトレードマークに、ファッションや美容ブランドの動画コンテンツ制作、広告制作、フランスのTV5mondeでのビデオジャーナリストとしての活動、SNS起業家のビジュアルブランディングなど、多岐にわたる分野で活躍。

ゴルフバッグとともに、世界中を旅している。

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