「今日は35℃まで上がるそうです。」
夏になると毎日のように耳にする天気予報ですが、私たちが見ているのはあくまでも「気温」です。
一方で、真夏のアスファルトやコンクリートは、強い日差しを受けることで60℃近くまで上昇することもあるといわれています。照り返しによって体感温度はさらに高まり、特に地面に近い場所で過ごす子どもやベビーカーの赤ちゃん、犬などのペットにとっては、大人が感じる以上に過酷な環境に。
近年は熱中症対策への関心が高まっていますが、本当に考えるべきなのは「気温」だけではありません。街の地表面をどう冷やすか。その新しい答えを提案しているのが、東邦レオ株式会社が推進する「Beat the Heat」プロジェクトです。
2026年8月21日、東京都千代田区・九段ハウスで開催されたメディア向け発表会では、独自の地表涼化システムをはじめ、2027年に横浜で開催される「GREEN×EXPO 2027」に向けた取り組みや、実際にその効果を体感できる展示が紹介されました。


「Beat the Heat」とは?
「Beat the Heat」は、その名の通り”暑さに打ち勝つ”という意味を持つプロジェクトです。しかし、エアコンを増やしたり、大規模な設備を導入したりすることが目的ではありません。
目指しているのは、”街そのものを、少しずつ涼しくすること”。人が歩いたとき、「この場所はなんだか涼しい」と自然に感じられる環境を増やしていくことを目標にしているそう。
そのために取り入れているのが、「色」「水」「植物」という、私たちの身近にある3つの要素。複雑な技術ではなく、自然の仕組みを生かして都市環境を改善していこうという考え方に、大きな特徴があります。


1. 色の力──熱をため込まない舗装へ
1つ目のポイントは「色」です。黒い服は暑く、白い服は比較的涼しく感じるというのは、どうしてでしょうか? これは色によって太陽光の吸収率が異なるためです。舗装材も同じで、黒っぽいアスファルトは熱を吸収しやすく、明るい色の舗装材は熱を反射しやすい性質があります。
街全体でこうした素材を選ぶことで、地表面温度の上昇を抑え、照り返しによる暑さの軽減にもつながります。普段あまり意識することのない”舗装の色”が、都市環境を左右する重要な要素であることを改めて感じました。
発表会でも、白い石と茶色のレンガチップの表面温度を実際に比較する実験が行われ、レンガチップが48℃台、白い石は37℃台と効果があることが示されていました!
2. 水の力──雨を無駄にせず、街を冷やす
2つ目は「水」です。打ち水をすると涼しく感じるのは、水が蒸発するときに周囲の熱を奪う「気化熱」の働きによるものです。
「Beat the Heat」では、この自然現象を都市全体で活用することを目指しています。降った雨を地下に浸透・貯留し、その水を舗装や植物へ循環させることで、街の温度を穏やかに下げていくという仕組みです。
限りある水資源を有効に使いながら暑さ対策にもつなげるという発想は、環境への配慮という点でも非常に合理的と言えそうですね。
3. 植物は、街の「天然のエアコン」
3つ目は「植物」です。
木陰が涼しい理由は、日差しを遮るだけではありません。植物は葉から水分を放出する「蒸散」という働きを持っています。この蒸散によって周囲の熱が奪われ、空気を自然に冷やします。つまり植物は、美しい景観をつくる存在であると同時に、街を冷やす役割も担っています。
ただ植栽を増やすだけではなく、植物が元気に育つ土壌や水循環まで含めて設計することが重要だという説明は、とても印象的でした。
キーワードは”組み合わせること”
今回の発表会で最も興味深かったのは、「色」「水」「植物」を別々に考えるのではなく、一つのシステムとして設計している点です。
熱を反射する舗装。雨水をためる仕組み。その水で育つ植物。植物が蒸散し、周囲の空気を冷やす。こうした自然の循環を都市の中で再現することで、機械に頼り過ぎない快適な環境をつくろうとしています。暑さ対策というより、「心地よい街をデザインする」という考え方に近いのかもしれません。
「グリーンインフラ」という考え方
今回の発表では、「グリーンインフラ」という言葉も紹介されました。これは道路や建物だけではなく、樹木や土、水などの自然環境も都市を支えるインフラとして活用していくという考え方です。
街路樹や公園には、景観を美しくするだけでなく、雨水を蓄えたり、気温を下げたり、生き物のすみかを守ったりと、さまざまな役割があります。
東邦レオは長年にわたり都市緑化やグリーンインフラに取り組んできた企業であり、「Beat the Heat」は、その経験を生かした新たなプロジェクトでもあります。
子どもやペットの目線で考える街づくり
さらに、今回の発表を通して特に印象に残ったのは、”子どもやペットの目線”という考え方でした。
大人が立っている高さでは風を感じられても、地面近くでは熱気がこもっていることがあります。ベビーカーの赤ちゃん。公園で遊ぶ子どもたち。散歩を楽しむ犬。こうした存在にとって、地表面温度が数℃下がることは、大きな意味を持ちます。
暑さ対策は、大人だけのためではありません。誰もが安心して外で過ごせる街をつくるための取り組みなのだと感じました。
「GREEN×EXPO 2027」への期待
発表会では、2027年に横浜市で開催される「GREEN×EXPO 2027(国際園芸博覧会)」についても紹介されました。
東邦レオはパビリオンへの参画を予定しており、これまで培ってきた都市緑化や環境技術を発信していく予定です。近年は世界各地で猛暑や豪雨など気候変動による影響が大きくなっています。
その中で、”街を自然の力でもっと快適にする”という考え方は、日本だけでなく世界からも注目されるテーマとなりそうです。
旅先の街も、もっと歩きたくなる場所へ
Voyageは、旅を楽しむ人へ向けたメディアです。だからこそ、改めて今回感じたのは、”歩きやすい街”は、観光地としての価値にもつながるということ。
真夏の旅行では、「暑すぎて外を歩けない」と感じる場面も少なくありません。もし駅前広場や観光スポット、公園、ホテル周辺などで地表温度を下げる工夫が広がれば、街歩きそのものがもっと快適になります。
旅先で思わず木陰のベンチに座りたくなる、ペットと一緒に安心して散歩ができる、子どもが元気に公園で遊べる ー そんな”過ごしたくなる街”は、これからの観光においても大きな魅力になっていくでしょう。
猛暑対策というと、エアコンや冷感グッズなど”暑さを避ける方法”に意識が向きがち。しかし今回の「Beat the Heat」は、その一歩先を見据えた取り組みでした。
色を工夫する。雨水を循環させる。植物の力を生かす ー そのどれも自然が本来持っている仕組みですが、それらを組み合わせることで、街全体を少しずつ快適に変えていくことができます。
暑さを我慢するのではなく、暑くなりにくい街をつくるという発想は、これからの都市づくりに欠かせない視点ではないでしょうか。旅先でも、暮らしの中でも、”思わず歩きたくなる街”が増えていくことを期待したい──そんな未来を感じさせる発表会でした。

