【Story of Art.13】ケバヤ職人 ― 優雅さと伝統を紡ぐ人

書と絵画に親しんだ幼少期、女優としてスクリーンに立ち、アナウンサーとして言葉を届けた日々——
Tsuyumi Miwa(三輪つゆ美)さんの人生には、つねに芸術が寄り添ってきました。

日本、イタリア、オーストラリア、そして現在、拠点とするシンガポール。多様な文化に触れてきた彼女が今、アーティストとして再び絵筆をとり、色彩と光の対話を通して描くのは、個人の記憶と”シンガポール”という多文化・他民族が共生する土地の記憶が交差する情景。

「Voyage」での本連載「Story of Art」では、まず、三輪つゆ美さんが近年発表した「Singapore Cultural Series」において、シンガポールの多文化社会を支える無数の”日常のヒーロー”たちにフォーカス! 

彼女が歩んできた芸術の軌跡と、作品に込められた想いを、ひとつずつ紐解いていきましょう。

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【Story of Art.13】ケバヤ職人 ― 優雅さと伝統を紡ぐ人

“Kebaya Maker”

“The kebaya is more than a garment—a symbol of grace, identity, and a timeless tradition passed down through generations.”
ケバヤは、単なる衣服ではありません。優雅さと誇りをまとい
世代から世代へと受け継がれてきた時を超える伝統の象徴なのです。

ケバヤは、マレー系やプラナカンの人々の文化に深く根づく伝統衣装。身体に沿う美しいシルエット、繊細な刺繍やレース模様。その一着には、優雅さと文化への誇りが映し出されています。綿やボイルなどの軽やかな生地で仕立てられ、サロンとともに身にまとうケバヤは、人々の歴史やアイデンティティを語り継ぐ存在でもあります。

プラナカンの家庭で育ったレイモンド・ウォン氏は、幼い頃から母や祖母が日常着として身にまとっていた「ケバヤ・ビク」の姿を見て育ちました。その記憶は、やがて彼の心に深い敬意と愛着を育み、自らの人生を捧げる仕事へとつながっていきます。

そして、伝統と美への情熱を胸に、彼はシンガポールで数少なくなったケバヤ職人の一人となりました。

プラナカンの老舗「Kim Choo Kueh Chang」の創業者リー・キム・チュー氏を祖母に持つレイモンド氏は、現在、プラナカン文化の継承を目的としたブティック「Rumah Kim Choo」を率いている存在。20年以上にわたり、一着一着を手仕事で仕立てながら、伝統への敬意と現代の感性を調和させてきました。その功績は高く評価され、シンガポール国家遺産庁より「Stewards of Intangible Cultural Heritage Award」を授与されています。

2023年には、シンガポール、ブルネイ、マレーシア、タイの4か国が共同で、ケバヤをユネスコ無形文化遺産代表一覧表への登録候補として推薦しました。

レイモンド氏にとって、その意義は決して制度や称号だけのものではありません。彼が針に糸を通すたび、守り続けているのはファッションを超えた文化の遺産。

ケバヤは衣服としてだけのものではなく、受け継がれてきた伝統への誇り、家族の愛情、そして職人たちの美意識を今に伝える生きた証。その一針一針が過去と現在を結び、未来へと続く物語を紡いでいます。

次回は、また別の”日常のヒーロー”が登場!
その一筆一筆の向こうに広がるシンガポールの多様な文化の物語を、どうぞお楽しみに。

🌕お知らせ
こちらの連載は、”毎月の満月の日”に更新されます。
次回の連載は、2026年6月29日(月)を予定しています。

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Written By

幼い頃から絵画と書道に親しみ、 10代で女優を経験。
多摩美術大学を卒業後、イタリア留学やアナウンサー業などを経て、12年前にシンガポールへ。

72ヶ国を旅してきた人生は、無限に広がる物語。
まだまだ面白いことが待っている気がして止まない。

国際結婚10年目、地球にやさしい生活を心がけながら、シンガポールを拠点に、その土地の風景や人々、旅の途中で出会った一瞬の美しさや感動を描くことで、世界に小さな魔法を散りばめていけるようなアーティスト活動を継続中。

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